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土曜コラム 今週の読書 原田マハ 「美しき愚かものたちのタブロー」感想

monet

こんにちは。

今週は原田マハさんの小説「美しき愚かものたちのタブロー」を読みました。

「タブロー」とは、フランス語で「絵画」のこと。

 

ヨーロッパで買い集めた美術品で日本初の本格的な西洋美術館を

作ろうとした松方幸次郎氏と、

その「松方コレクション」を戦火から守ろうとした人、

敵国財産としてフランス政府に接収されたコレクションを

取り戻そうとした人々の物語です。

 

ゆるよしは、2016年に神戸市立博物館で開催された

「松方コレクション展」に行っていたので、

ある程度、松方幸次郎氏や「松方コレクション」について

知っていたのですが、それでも

ゆるよし
ゆるよし
だる~

って思ってしまいました。

 

松方幸次郎氏は、初代川崎造船所(現川崎重工業)の社長で、

美術館設立のために、アホほど美術品を買い集めた方。

 

ジベルニーにあるモネの家にも行って、モネに直接

幸次郎
幸次郎
いっぱいちょうだい

って言った方。

 

松方氏は第一次世界大戦中に、造船業で巨万の富を得た実業家です。

その人生、栄枯盛衰を語るには、当時の

社会情勢、戦況、景気など、歴史的な背景がなくては

語れないところがあることは分かりますが、

正直、面倒臭かったです。

 

なんか、松方幸次郎記念館があるとしたら、

そのパンフレットとか年表を延々と読まされている感があり

あまり、読書がはかどりませんでした。

近代の歴史が苦手なんだよなぁ~。。。

 

それにしても、すさまじい量の美術品を買い集めたものである。

総数1万点以上。

(ロンドンの倉庫に預けていた分は、残念ながら火事で焼失してしまっています。)

 

松方氏はいつもステッキをついて歩いているのだが、

画廊に行って、ステッキで

幸次郎
幸次郎
ここからここまでちょうだい

といったような買い方をしていたらしい。

ゆるよし
ゆるよし
叶姉妹かっ!

 

松方コレクション展では、松方氏が建てようとしていた

「共楽美術館」の図面や完成予想図もありました。

ヨーロピアンで、中庭のある修道院か学校のようなクラシックな建物。

松方氏のお気に入りの英国人画家ブラングィンが描いたものです。

 

しかし、実際は、コレクション返還の条件としてフランス政府から

美術館を作るように言われ、日本政府が作ったのは

上野にある「国立西洋美術館」

ル・コルビュジエの設計で、2016年に

世界文化遺産に登録された建物です。

 

「松方コレクション」の返還が決まったのは1951年。

世界恐慌のあおりを受けて没落してしまっていた松方幸次郎氏は

返還の決定を待たず、1950年に亡くなっています。享年84歳。

盛者必衰。。。。

 

今と違って、当時は、西洋美術を知るにも

ざらざら紙の雑誌に載ったモノクロ写真でしか見れなかった。

日本の人たちに実物の「タブロー」を見せたいと願った松方氏。

松方氏は

幸次郎
幸次郎
わしは絵のことはわからん

と言っていたそうです。

それでも、大量の絵画や彫刻を集めていった。

実物を見ることでしかわからない絵の輝きを

人々に見て欲しかったのでしょう。

 

文化というものの力を信じていたのだろうなぁ。

松方氏は、ヨーロッパで日本の浮世絵も大量購入しています。

日本という国を、日本人の文化度を

もっともっと高めたいと願われていたのではないかと思いました。

すごい人です。

 

今は、どんな絵でも、画像検索ですぐにカラーで見ることができます。

それでもやっぱり、美術館で、実物と向き合うと

新しい発見があったりします。

絵の大きさや、絵と自分との距離で、驚くほどの

輝きや、揺らぎを感じることがあります。

 

美術の教科書に載っていたモネの「睡蓮」。

輝きなんて、ひとつも感じることができませんでした。

印象派の特徴である「明るさ」なんてのも感じることはなかった。

ブリヂストン美術館(現アーティゾン美術館)で「睡蓮の池」

を実際に「ある距離」で見たとき、はじめて

ゆるよし
ゆるよし
あー、すごい!

って思って、それから、できるだけ実物を見に行くようになりました。

 

絵画を教科書でしか見たことがなくて

絵なんて「つまらない」って思っている人は

ぜひ、美術館で実際に実物を見てみるといいと思います。

新たな世界がそこから開くこともあるかもですよ。

 

幸次郎氏のお孫さんが槙文彦氏の奥さんだということも

今回調べていて知りました。

槙文彦氏は代官山の「ヒルサイドテラス」の設計者。

「4 ワールドトレードセンター」の設計者でもあります。

93歳、今も現役で活躍されています。こちらもすごい人。

それではみなさま、よい週末をお過ごしください。

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