土曜コラム

土曜コラム 今週の読書 津村記久子 歳時記エッセイ集「まぬけなこよみ」感想

takenoko

こんにちは。

今週は津村記久子さんのエッセイ集「まぬけなこよみ」を読みました。

一年の季節をめぐる歳時記エッセイ。

節分や春秋分などの二十四節気と、七十二候にちなんだ

お題について書かれています。

 

二十四節気(にじゅうしせっき)は知っていましたが、

七十二候(しちじゅうにこう)については

知らないことが多く、勉強になりました。

日本には季節を表す美しいことばがたくさんあるのですね。

桃始笑(ももはじめてさく)は

「桃の花が咲き始める時期」 の意。

雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)は

「雷が鳴らなくなる時期」の意。など。

美しいことばを学びながら、津村記久子さんの

普通でありながら、なんかおかしな感性を楽しんでいく。

 

たとえば、たけのこについて。

 

たけのこについて、津村記久子さんは

「あの断面が素晴らしい。」

「プレーリードッグの住処にも匹敵する断面である。」

という。

 

ゆるよし
ゆるよし
そんなこと、考えたこともなかった。

 

そして、たけのこがマンションであった場合、

「天井が低いので、家賃が低くて済みそう」だとか、

「2フロアを分譲してもらえるかも」などと、夢をふくらませる。

 

しかし、人はたけのこには住めない。

 

夢から現実に強引に引き戻されるのが可笑しい。

 

たけのこの回がとても気に入ったので、

読書印象画もたけのこの断面を描いたのだが、

その後出てきた、ミノムシの回も秀逸であった。

以下とても気に入ったところの引用です。

ふとんにぐるぐる巻きになるのがとにかく好きだ。

ちゃんと端っこから自分を巻いていく。

そして頭の方のをちょいちょい丸め込んで、

完全にふとんの中に入ってしまう。

自分がふとんになったような気がする。

もしくは、巻き寿司の具、もしくは、まるごとバナナの

バナナになった気がしてくる。

しかし、やはり決定的な「ふとんぐるぐる巻きの自分」の

セルフイメージは、ミノムシかと思われる。

わたしはふとんの暗闇の中で、

「・・・・・・・・・・・・」と口を開ける。

一応生きてはいるのだが、微動だにしない。

「・・・・・・・・・・・・」。

何もしない。

何も考えない。

幸せだ。

文庫の表紙は、ミノムシの回のイラストであった。

納得である。

 

それではみなさま、よい週末をお過ごしください。

獅子舞
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