こんにちは。
今週は、瀬尾まいこ さんの「傑作はまだ」を読みました。
悪い人がひとりも出て来ないファンタジーのような小説。
でも時々、このようなおとぎ話を無性に読みたくなる。
ほどんど引きこもりのように人と関わらない生活をしていた
小説家のもとに、養育費だけを払ってきた、会ったことのない
実の息子が訪ねてきて・・・・・という話なのだが、
その息子(25歳)がとてもおおらか。
ご近所ともすぐに仲良しになるし、
ごく普通の感覚をもって、小説家に接する。
ほどんど世間と関わらずに生活してきた小説家は、
ひとに淹れてもらったコーヒーはよりおいしいと感じること、
食材に合った食器を選ぶということ、
お世話になった人にはお礼をすること、
気にかけてくれる人がいると嬉しいということ、
笑っている人がそばにいると、どんな献立であっても
食事は格段に楽しくなるということ。
などを、息子との生活の中で気づいていく。
誰かと近づけば、傷つくことも傷つけてしまうこともある。
自分のペースどおりに進めないし、
何気ない相手のふるまいに不安に駆られることもある。
自分がどう思われているのかが気にかかり、
それと同時に誰も俺なんか見ていないんだと自意識の強さに
恥ずかしくなる。
自分の価値がどれくらいなのか無意味なことばかりうかがっては、
優越感や劣等感に襲われる。
一人で過ごしていれば、そういう醜いものすべてを
切り捨てられる。
ストレスも嫌らしい感情も生まれない心は、
きれいで穏やかだ。
しかし、こんなふうにうれしい気持ちになることは、
一人では起こらない。
お花畑のような小説だけど、暗いニュースばかりが多いこのごろ、
このように平和で、ささやかな幸せを描いた小説を読むことは
とても救いになると思う。必要。
それではみなさま、よい週末をお過ごしください。