こんにちは。
今週は柴崎友香さんの小説「待ち遠しい」を読みました。
関西に住む39歳の女性「春子」が主人公。
ふとしたことで、ご近所に住む「ゆかり」63歳と
「ゆかり」の甥の妻である「沙希」25歳とのご近所付き合いがはじまる。
と、あまり期待していなかったのですが、
単純な和気あいあい小説ではなく、とても面白かったです。
おしゃべりで世話焼きのおばさん「ゆかり」。
悪気なく(?)人を不愉快な気持ちにさせる言葉や態度を取る「沙希」。
人との衝突を避け、穏やかに暮らしたい「春子」。
それぞれが、それぞれの過去を持ち、現在を生きている。
「春子」は美術系の学部卒で、
今でも博物館や美術館に行くのが好きで、
休日には、消しゴム版画を作ったり、刺繍をしたりして
自分の時間を自分なりに楽しんでいる。
春子は、今の生活が、じゅうぶんいい、と思った。
仕事があって、明日や来月のことがだいたい予測出来て、
それなりに好きなことも楽しめて。
やっと、自分自身の生活というものを自分の力で
営んでいる実感が持ててきたのだ。
空家になっていた母屋に「ゆかり」が引っ越してきて
明かりが灯っているのをみて
「暗いよりこのほうがいい」と「春子」は思う。
日々のなんでもないことを「いい」とか「楽しい」とか
思える人がとても好きである。
仕事の帰りに月に二度ほど一人で好きな喫茶店に寄ったり、
そこで、眺めのいいお気に入りの席に座れなくても
それでいいと思えたり、
土曜日の午後に消しゴムはんこを無心で彫ったり。
そして、時々登場して鋭い意見を言う
「春子」の学生時代からの友人である「直美」もいい。
「沙希」だけがとても苦手だ。
読書印象画は神坂雪佳の金魚。
「春子」が部屋に飾っていた金魚の刺繍を見た「ゆかり」が
「妖怪だと思った」と言うシーンがあって、イメージしたのが
神坂雪佳の金魚だったのですが、
歌川国芳の金魚が正解でしたね。
でもこれも、かなりな妖怪感。
柴崎友香さんの小説には、時折、美術に関することが
出てくるのも、自分が彼女の小説を好きな要因のひとつです。
おすすめ。
それではみなさま、よい週末をお過ごしください。