土曜コラム

土曜コラム 今週の読書 柴崎友香 都営団地を舞台とした長編小説「千の扉」感想

団地

こんにちは。

今週は 柴崎友香さんの 「千の扉」を読みました。

 

柴崎友香さんも、文庫が出たら買う作家さんのひとり。

ずっと「しばさきゆか」さんだと思っていましたが

しばさきともかさんだということに今気づきました。

今までに読んだ著作は

  1. きょうのできごと
  2. その街の今は
  3. 週末カミング
  4. 寝ても覚めても
  5. かわうそ堀怪談見習い
  6. フルタイムライフ
  7. 虹色と幸運

どうやら、芥川賞を受賞された、「春の庭」を読んでいないようです。

(もしかしたら読んでいるかも。すぐ忘れてしまうので。)

というのも、湯本香樹実さんの「夏の庭」という名作の

印象が強すぎて、本屋で「春の庭」を手に取って

あらすじを読むたびに

ゆるよし
ゆるよし
読んだような、読んでないような・・・・

といった、あいまいな気持ちになってしまうのです。

多分、かなり読み進めないと、未読か既読か判明しない気がする。

自分の読書は、「活字を追っていく」ことで得られる

浮遊感を楽しむところにあるので、ストーリーをすぐに

忘れてしまうのです。

 

柴崎友香さんも、中島京子さんと同じく、

戦争のことや、戦後のことを書かれることが多い印象。

こちらの「千の扉」も、現代の築40年の都営団地が舞台ですが、

色々な時代のエピソードが散りばめられていて、

巨大な団地の中をさまようように、時空もさまようような

不思議な読書体験となりました。

 

いいなと思ったのは、

主人公が姑と話をしていて、離婚歴のある自分の夫について

前はなぜ離婚したのかを聞きたいのを思いとどまるところ。

結婚相手のことを野次馬的な興味で知りたいというのは、

人として思いやりに欠けるのではないか。

いや、正確には、思いやりに欠けると思われることが

気になる。

正直だ。

主人公の正直さが、とても伝わってくる。

 

あと、タイミング的に気になったのは

「信じるっていうのは裏切る可能性も含めて信じることやって、

高校のときに国語のテストの問題文に書いてあって、

誰の随筆やったか探しても見つからへんのやけど」

と主人公の女性が言うところ。

 

ちょうど、前の日に、なぜか会社の同僚が、芦田愛菜ちゃんについて

どれほど賢い子なのかを力説してて、

芦田愛菜ちゃんの映画の舞台挨拶の動画をわざわざ見せてくれたのです。

「信じるということ、裏切られたと感じること」について

自分の考えを一生懸命説明していて、

ゆるよし
ゆるよし
すごいなぁ

って思って感心していたのですが、

これを読んだ時に、

ゆるよし
ゆるよし
芦田愛菜ちゃんは、その随筆を読んだことがあるのかも

ってふと思いました。

「千の扉」も読まれているのかもしれないですね。

彼女は大変な読書家だそうです。16歳。

その芦田愛菜ちゃんの出演した映画の原作、

今村夏子さんの「星の子」も以前に読みましたが、

面白かったですよ。

愛菜ちゃんが主演なら、きっと映画も面白いに違いないと思います。

そのうち観たいと思います。

 

柴崎友香さんの小説を読んでいると、時々、

登場人物の学生時代のエピソードとして、

興味深い話が出てきます。

砧青磁(きぬたせいじ)に 千声(せんせい)と万声(ばんせい)

というものがあるのですが、

重要文化財が「千声」

国宝が「万声」

どちらも同じ砧青磁花生 (きぬたせいじはないけ)

で、同じ形をしているのですが、

どちらが国宝かは「並べて見れば一目でわかる」というエピソードがありました。

「美」とはそいういうものだ というエピソードだったと記憶しています。

自分は、それほど陶磁器に興味がないのですが、

美しいものが好きなので、

ゆるよし
ゆるよし
ほほう!

と思って、その後、「万声」は実際に見る機会を得ました。

そういうことを知れたり、興味の幅が広がることも

読書のたのしいところです。

 

柴崎友香さんの「千の扉」

おすすめです。

それではみなさま、よい週末をお過ごしください。