土曜コラム

土曜コラム 今週の読書 窪美澄 女性の人生を描く長編小説「たおやかに輪をえがいて」感想

blueberryjam

こんにちは。

今週は窪美澄さんの小説「たおやかに輪をえがいて」を読みました。

主人公はホームセンターでパートとして働く51歳の女性。

穏やかな夫と二十歳の娘と3人で暮らしている平凡な主婦である。

家族の世話をし、職場でもなるべく目立たないように、

波風を立てないようにして過ごしてきて、

このまま、ゆっくり穏やかに人生を終えていくのだろうと考えている。

 

しかし、ある日、夫のものと思われる

風俗店のポイントカードを見つけてしまい・・・・・

というお話。

 

主人公はとても頑なな女性である。

家族のために、料理を作り、家を整え、子育てもし、

懸命にやってきたのに、「裏切られた」と強く感じてしまう。

 

渋谷の風俗店に偵察に出かけるも、その近くで

娘が「パパ活」しているのではないかと思われるような男性と

歩いているのを見てしまう。

 

踏んだり蹴ったり。

 

良き妻、良き母であろうと努めてきたにも関わらずこの結果。

自分の人生は何だったのだろう・・・・

とまで思いはじめる。

 

しかし、この主人公をいいなと思うのは

「裏切られた!」「ヒドイ!」と被害者ぶらずに

自分のどこが間違っていたのだろうと自省をするところ。

 

そして、娘が警察に保護されたことをキッカケに

遂に、主人公は家出を決意する。

そして、妻でも母でもない、「自分の人生」を歩みはじめるのだ。

となるのだが、まぁ、夢物語感がありますね。

 

家出をする背中を押してくれる学生時代の友達がいて、

その友達は、住む部屋や仕事も提供してくれる。

なかなかそんなことはないのではないか。

 

後半、主人公は生き生きと一人の生活を楽しみはじめるのが

読むには楽しいのだが、

ゆるよし
ゆるよし
実際そんな風にはならんやろ

とどうしても黒い心の中で思ってしまう。

 

私なんて

が口癖だった主人公がそう言わない人に変わっていくという、

中高年の女性が励まされる小説です。

 

それではみなさま、よい週末をお過ごしください。

 

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