こんにちは。
今週は小野寺史宜さんの小説「近いはずの人」を読みました。
小野寺史宜さんの小説は最近気に入っていて、よく読みます。
誠実な人が主人公であることが多く、
読んでいると、汚れちまった心が少し洗われるような気がします。
(あくまでも「気がする」だけで、そう簡単には汚れは落ちない。)
「近いはずの人」もそんな感じなのかと思って読みはじめたのですが、
ちょっといつもと違う感触。
突然の事故で妻を亡くした夫のお話。
妻の残した携帯電話の暗証番号のロックを外そうと
4桁の数字を「0000」から入力していく。
毎晩、ビールを飲みながら、ひたすら数字を入力する主人公。
「近いはずの人」つまり、自分の妻が何を考えていたのか、
どういう人間だったのか、分からなくなっていく。
会社の女友達と旅行に行っているものだと思っていたのに、
温泉宿に向かうタクシーの事故でひとりで亡くなった妻。
一番近くにいたのに、妻が何を考えていたのか、
どういう人間だったのか分からない。
どんなに近くにいても、他人の考えていることなんて
分かりっこないという、当たり前のことであるが、
ショックなことに打ちのめされる主人公。
ある日、ついに暗証番号が解け、明らかになる
旅行当日に交わした謎の男とのメール。
なかなかに沈鬱な内容の物語である。
妻に死なれた上に、妻に裏切られていた男。
幸せだった結婚生活、子どもを流産で亡くしたこと、
それからふさぎ込んでいた妻、そっとしておいた夫、
仕事を再開した妻。そして・・・。
「近いはずの人」のことを何もわかっていなかった。
それでも、主人公の出した結論とは。
内容的には暗めですが、読みやすいです。
それではみなさま、よい週末をお過ごしください。