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土曜コラム 今週の読書 村田沙耶香 「しろいろの街の、その骨の体温の」感想

new town

こんにちは。

今週は村田沙耶香さんの「しろいろの街の、その骨の体温の」を読みました。

村田沙耶香さんの小説を読むのは3冊目。

「コンビニ人間」「地球星人」→本書です。

 

「しろいろの街の、その骨の体温の」は、本屋でよく見かけていましたが、

なんとなく、タイトルと表紙から「猟奇殺人」とか

「台所の床下から死体が」といったことを勝手に連想していて

読んでいませんでした。

 

しかし、それは勘違いで、本書は、郊外のニュータウンに住む小学生の女の子が

自分自身の価値観を見つけるまでの物語。

 

学校の教室って、こんなにも残酷な場所なのかと震えました。

 

ゆるよしは、「幸せさん」だったのか、単に鈍かったのか、

教室内のヒエラルキー的なものを感じない訳ではなかったけど、

この主人公のように、毎日神経を擦り減らすようなことはありませんでした。

 

主人公は、「観察」することで、自分を守ろうとする。

いつも注意深く周囲の動向を観察し、常に目立たぬよう、

教室内に埋没するように努める。

教室内では、「分不相応に出る杭」「打たれる」 のだ。

コワイ。

 

余計なことはしなければいいのに。

出すぎた真似をせず、教室の中の価値観に従ってやり過ごすのだ。

大人しく、立場をわきまえて振る舞うこと。

それが自尊心を傷つけられない、唯一の方法なのに。

 

主人公の「観察」は、周囲だけに留まらない。

自分自身の容姿についても、冷徹な眼差しで観察し、

ほとんど「絶望」する。

結構キツイ。

 

本書は、スマホとかLINEとかがない時代の物語なのだが、

今の教室は、もっと恐ろしい場所になっているのかも知れないですね。

よかった。グループLINEがない時代に学校を終えることが出来て。

 

主人公は、非常に特殊で、極端な女の子だと思うが、

「なんだこいつ」と思っていても顔には出さずに流していったり、

本当に好きな男の子の名前は言わず、

誰もが選ぶ「みんなに人気の男の子」のことを好きだと言ったり、

「女の子あるある」も満載。

 

普通の女の子として楽しいと思うことを楽しいと思いながら、

一方で、強烈な自意識を持て余し、時に爆発する主人公。

 

学生時代(子供時代)に戻りたくないものだ。

教室という狭い場所、ニュータウンという狭い街から

逃げだすことの出来ない状況。

 

大人になれば、選択肢が増える。

居たくない場所には近寄らない、

住みたくない場所からは引っ越す。

 

子供のころは

ゆるよし
ゆるよし
大人になんてなりたくないやいや

って思っていたけど、大人になった今、

ゆるよし
ゆるよし
子供になんて絶対に戻りたくない。

って思う。

 

「幸せさん」の自分でもそうなのに、主人公のような子たちは

どうなんだろう。

大人になったらなったで、ママ友とのマウンティングとか

パート先での振る舞いとかに疲弊していくのかなぁ。

しんどいなぁ。

 

西加奈子さんが解説で書いているように

私たちは未だ、「価値観の奴隷」だ。

 

自分自身の価値観を見つけること。

何を美しいと思うかは、自分自身で決めていいということ。

 

「教室」の中の価値観を舞台に描かれているが、

「社会」の中の価値観も同じこと。

 

いろいろ考えさせられました。

村田沙耶香さんの小説は凄いです。

 

それではみなさま、よい週末をお過ごしください。

クリオネ
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